未来人材 Interview 7

未来人材 Interview 7

Markus Fischer

MarkusFischer. Design


Markus Fischer

建築家、デザイナー及びデザインコンサルタント。2012年に設立した自身のスタジオで企業の未来構想を共同で作る専門家チームを結成している。彼のプロジェクトの多くは自然に触発され、新しいソリューションを提供している。以前はFesto社で自然からの学びをテクノロジーに活かすことを狙いとしてBionic Learning Network Projectの研究チームを発足。デルフト工科大学やシュトゥットガルト工科大学など複数の大学や研究機関でプロジェクト実現した。母国ではグッドデザイン賞やドイツ連邦大統領賞など様々な賞を受賞している。

「建築」と「自然」への興味

私は元々鉄鋼からツールを造るツールメーカーから出発をしました。その後建築を学び、そこで「自然」を考える人に魅せられました。例えばケーブルで、蜘蛛が巣を張るような形で大きな屋根を造り、美しさと同時に非常に軽量な建物である、という機能性も兼ね備えています。そういった構造物を造る方から影響を受けました。元々生物や動物に興味があり、化石が「自然」に関心を持つ出発点になっています。化石というのは、動物が1億8000年前のものが死んで、それが石の中にはまってずっと保存されていた、という状態のものです。それだけ昔のものが、動物本来の形状や性質、保存状態など様々な環境のお陰で年月を超えても形を残している、ということに自然の神秘性を感じました。また、Festoという会社に勤めていた時に、回転するコンポーネントを持たない鳥から、飛ぶための方法を学ぶことはできるか、という発想がありました。そして当時はそれを造るだけのチームを構成する余裕があり、実際に空を飛ぶ鳥のロボットを造りました。バイオミックラーニングという取り組みをする機会がFestoにあり、生物学から学んで、それをオートメーションに反映するという取り組みです。そして現在も継続的に学習は続けています。このように東京の大学に来てレクチャーをすることもそうですが、他の方の講義を聞いてどんなことをしているのか学ぶことも1つの学習ですし、日本について知ることも学習です。生涯が学習だと考えています。新しいことを学ぶのに遅すぎるということはないと思います。また、私生活を豊かにすることも大事だと考えています。私は4歳の娘がおりまして、その娘と遊ぶことや、散歩や水泳にもよく行きます。読書も非常に頭のリフレッシュになっています。

自分のやり方を見つけ、多様性を受け入れる

また、今の自分を形成している1つの要因として、良い教師に恵まれたという点があります。その先生は自分で学習するものを見つけさせる方針の先生でした。建築学では先生がこう造れ、と指示を出して来ることもあります。しかしこの先生は、自分の建築のやり方を見つけろと、それを見つけることが良いことなのだと教えてくれました。その後も周囲の人に恵まれ、オープンな形で仕事をさせてもらえたと思います。人をコミットさせるにはボスからのサポートがあり、自分に必要な能力を身につけさせてもらって、そして自分のやり方でやる、ということが非常に重要だと思います。そういった経験を活かし、私自身も部下や同僚などが自分自身のやり方を見出すためのサポートをしようと勤めています。全ての人が異なるバックグラウンドを抱えていると思いますので、学ぶ人がどういったものを必要としているのか、そのニーズを把握し、サポートしていくということが懸命であると思います。また会社でチームを形成する際、一番大事なのは違う性格の人を集めてチームを作ることだということです。私はこの点で最初失敗しました。初めは自分と似たような性格の人を集めたほうがいいのではないかと思ったのですが、そうではなかった。例えばサッカーでチームを作る際も、違う能力を持っている人を集めたほうが強いチームになる。そういった意味では多様性が需要だということです。オープンで、多様性を持ったチームで仕事にあたることが、人材育成にとっても重要なことだと思います。私の場合ですと、バイオロジスト、生物学者、メカニカルエンジニア、ソフトウェアエンジニアなど、様々な分野の専門家と一緒に働くことによって、非常にインスピレーションが掻き立てられます。しかしこのような多様な人達と働く上で、課題もあります。異なる国、あるいは大陸をまたがったチーム構成になると、プロジェクトの「言葉」を見つけなければならない、ということです。様々な分野の人を集めて、1つの共通の言葉を作るということは非常に難しいことです。なぜならバイオロジスト、生物学者、メカニカルエンジニア、ソフトウェアエンジニア、皆それぞれの領域でそれぞれ違う専門的な言葉を使いますので、お互いそれが共通言語になっていない場合があります。ですから、それを喋れるようにする、まとめる能力を持っているデザイナーを始めに起用する、ということも重要だと思います。言葉の置き換えがなぜ大事かと言いますと、昨今のイノベーションというのは、ハードウェアとソフトウェアの境目や、ハードウェアと機械工学の境目、そういった「境目」で起きています。ですからなおさらトランスレーションが大事になってくるのだと思います。